2016/06/19

連れて行ってもらうはずだったルートに自前で

■ 連れて行ってもらうはずだったルートに自前で♪

今週末は、山の先輩に ”良い先輩はケツを歩いてくれる先輩だ” を地でやってもらいました。

乾徳山旗立岩中央稜です。3P、Ⅳ級+、Ⅲ級、Ⅱ級。

ここは新人のアルパインデビューに良いような、アクセスがよく、アプローチも短く、ピッチ数も3Pのルートですが、一緒に行ってくれる人がいない状態でした。

前の山岳会では入会直後に、ここへ行きたいと申し出ていましたが、先輩の返事は、「支点がしっかりしているフリークライミングのルートにしてください」というもの・・・

アルパインの基本技術である、天候判断、装備の検討、ルートファインディングなどを、どんなに幼稚で、易しい段階からでも、身に着けさせようと考える、昔流の育て方を志向する師匠とは、会の先輩の考え方は乖離がありそうでした・・・。師匠は、登攀技術以前に、山を見る目を重視するということでした。

そして、師匠は易しくてもリードを重視する人でした。アイスでも初年度からリードでした。リードする気がない人には山の技術は教えないと態度をはっきりさせていました。私もその考えに賛成です。

一方、会は危ないことはさせない、ということで3年目でもトップロープだけですし、ビレイなんていつになったらマスターするのと言うような状態でした。一般的に人工壁通いをする人なら1週間でマスターする内容が数年目の人にもマスターできないので、当然の帰結としてアルパインのルートにも行けない、という状態でした。

まぁそれは、教えていない(教える時間が限られている)ので、落ちないルートしか行けない(行かない)。 このことについては現状を考えると、仕方ないなぁと理解はしたのですが、理想的な姿からは程遠いということは確実に言えることでした。ビレイができないと岩には連れて行かないと言わないから、落ちれないビレイしかできるようにならないという道理だったのです。

今回は、アルパイン初年度で、連れて行ってもらうはずだったルートに自前で行くことができるようになり、それはとてもうれしいことでした。

ケツを歩いてくれた先輩には大変感謝です☆

■ 師匠の直伝

来てくれた方は、かなり遠方からだったので、日帰りはもったいないな~ということで、1泊二日として、前日はゲレンデにしました。

ゲレンデは、どこが良いかな~と悩みましたが、せっかくなので、行ったことがない場所が良いだろうと、十二ヶ岳の岩場へお連れしました。ここは百岩場に紹介されていないので、連れて行かれないと分かりづらいからです。

土曜のほうがお天気の予報がよかったので、どちらを先にするか、悩みましたが、前日がゲレンデ、翌日が本番と言うゲレンデ→本番という正当派の流れにしました。これは、師匠の直伝です。

例えば、アイスルートに行く前には、アイスゲレンデを組み合わせ、一泊二日にします。

十二ヶ岳の岩場と乾徳山旗立岩という組み合わせは、師匠鈴木と過ごした、アルパイン初心者の日々を思い起こさせました。あのころは本当にありがとうございました。今、私があるのは、師匠鈴木のおかげです。

不思議なことに、初日の岩場に鈴木さんのお弟子さんがひょここり現れ「あれ!?」と久しぶりの再会。二人ともまったくのゼロの時点で出会い、スタートがほぼ同じ時期です。彼とはルートも師匠をまじえて行ったことがあり、二人とも三年目ですが、彼の方は、アルパイン志向の師匠の会に属して、師匠や一緒にクライミング練習する先輩や同期の仲間に恵まれた会環境で、順調に成長しました。

私は、と言えば、「〇〇さんはもう××ができる・・・」と師匠が話す内容を羨ましく聞いても、相手がいないのですから、与えられない環境に指をくわえるばかり。

一緒に岩に行く、信頼できる相手に恵まれず、クライミング経験を積みたい初心者の時期に、思うように経験値を積むことができずに、フラストレーションを貯めました。

「一緒に行く人がいないと文句を言って行動しないのではなく、会内で仲間を育てるべきだ」という師匠に意見に、「そうだな」と思い、会のメンバーを人工壁での練習に誘ったり、勉強会に誘ったりしましたが、やはり最初からモチベーションが違う人たちは、ダメでした。

善意のつもりでも、ビレイで私を引っ張り落としそうにしたり、ルートでもロープを指定しても持ってこないなど、何が分かっていないか分かっていない状態にあり、無知のために信頼することができないだけでなく、むしろお荷物状態でした。私の方がフォローに回らなくてはならなかったのです。私自身がまだ初心者なのに、ガイド並みに案内したり、安全管理しないといけなかったのです。トップロープを張ってあげる立場です。

まぁ、でも他会の友人によると、師匠の会のような状況が特別良い事例で、私のような状況のほうが、むしろ普通のようでした。特にアルパインに特化していない会では、”トンデモは当たり前”のようでした。

同行者を得ることには、苦労して登ってきたので、もし師匠の会の新人だったら、これくらいの時期には、ここへ連れて行ってもらうだろうというようなルートへは、思うように行けないでいました・・・。

この乾徳山旗立岩も、初心者当時に「おススメしますよ」と師匠から薦められてはいたものの、先輩たちも、このルートを登ったことがなく、提案しても、前述のように、考え方の違いから却下され、という状態・・・。

先輩も連れて行ってくれないし、つるべで行く相手もおらず、行くと返事してくれる相手はルート名を出しても、知らない。つまり、行きたいのかどうかも分からない。

もちろん、会の先輩は、そういうことも理解してくれ、前穂北尾根に連れて行ってくれたので、先輩たちは先輩たちなりに頑張って連れて行ってくれたわけで、感謝しています。

でも前穂北尾根に行った時、ロープ径が11mmだったことには驚きました・・・。確保器に入りません。11mmを使う人なんてイマドキいませんから、アルパインから離れて長いのだろうと分かります。そんな中、新人が行きたい!というから、頑張って行ってくれたんだろうなぁ~。そうかぁ・・・。先輩たちにとっては、とても大変なことだったのです、たぶん。

11mmがちょっと昔のロープだったことも新人は分からなかったので、”なんで私の軽量シングルではだめなのかしら・・・”と当時は思うばかりでした。

それにしても、山梨には、前穂北尾根でなくても、近場でこんなにアルパインの基本を楽しく学べる良き場所があったのねぇ・・・。

この岩場をもっと活用していれば、先輩も負担少なく、新人にアルパインって何がどういうことなのか?というところを伝えることができたでしょう。

新人のペアで連れて来れば、「もう分かったでしょ、あとは二人で勝手に成長してね」という路線も可能になったことでしょう・・・。情報はあったのに、もったいないことでした。

しかも、このルート、別の会で、話をしたら、話をした人が聞いて行ってしまったんですよね。

新人育成のノウハウ・・・それはある意味、昨今は得難いモノと思いますが・・・・は、師匠が思った相手・・・おそらくは私の会の先輩たち・・・へは、伝わらず、外野の耳敏い人に次ぐに伝わってしまった・・・。

このことは、私からしてみると、あたかも、私へ贈られたプレゼントが、私の手をするりと抜けて、誰か他の人へ渡ってしまったような、寂しい気持ちを起こさせるものでした・・・。

”ええ~?!師匠は、私のために”良いよ”と薦めてくれたルートなのに・・・”ということです。

でも、3年、機会の成立を待った甲斐がありました。

3Pと短いルートではありましたが、1P目のⅣ級+の核心部と3P目をリードし、初見でつるべで行くことができました。

初見&つるべ

っていうのが大事な点です。

核心部1P目 ハング下をリード中